スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

人魚姫編6(キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」六冊目)

シリーズ
キモオタとティンクの旅立ち編
シンデレラ編
裸の王様編
泣いた赤鬼編
マッチ売りの少女編
桃太郎編
○○○○○○とアラビアンナイト編
人魚姫編1
人魚姫編2
人魚姫編3
人魚姫編4
人魚姫編5
人魚姫編6
人魚姫編7



690: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:13:36 ID:eXh

人魚王「……」ゼェゼェ

鬼神赤鬼「もうグダグダと喚く力も残ってねぇか。まあ良い、準備運動にもならなかったが……多少は体が温まったようだ」

グイッ

鬼神赤鬼「その礼だ、痛みすら感じぬよう俺が息の根を止めてやろう」ググッ

人魚王「ぐぐっ……」ゼェゼェ

髪の短い人魚「お父様……!」

ズダーン ズダーン

鬼神赤鬼「……チッ」パシッパシッ

赤ずきん「……銃弾を掴むなんて、随分と優れた胴体視力ね」ガチャッ

鬼神赤鬼「……どういうつもりだ小娘?」ギロリ

赤ずきん「やめなさい、王を殺すことは私たちの目的ではないわ。それに…罪のない人魚を殺していた彼を裁くのは私たちではないもの」

鬼神赤鬼「思い上がるなよ小娘……!」ギロリ

691: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:15:54 ID:eXh

ヒュン

赤ずきん「一瞬で距離を……!」

グイッ

鬼神赤鬼「いいか?俺にとって貴様は邪魔だ、だが殺せばあの小僧が何をするか解らん……最悪、俺諸共命を絶つ可能性もある。故に貴様は生かしてやっている」シュバッ

ガシッ

赤ずきん「……ぐっ、離しなさい……!」

鬼神赤鬼「だが貴様を殺すなど容易いという事を忘れるな。この細い首に爪を這わせれば事足りる……あまりでかい態度を取るんじゃねぇぞ、小娘」ギロリ

赤ずきん「……あなたこそ、思い上がらないで」キッ

鬼神赤鬼「あぁ?」

赤ずきん「今回あなたを外に出したのは、あのままだと赤鬼が殺されそうだったからよ」キッ

赤ずきん「だから私は彼を助けるために気絶させた。赤鬼は鬼神のあなたなら何とか出来ると思っていたようだけど、私はあなたを信用なんかしていないの…!」

鬼神赤鬼「信用などいらん、人間である貴様と協力するつもりなど毛頭無いからな。更に言えば今はこの肉体の主導権は俺にある、俺がどう動こうと誰を殺そうと勝手だ。指図をするな、人間風情が」ブオンッ

ドサッ!

赤ずきん「ゲホッ……!随分と……手荒じゃないの、鬼神…!」ゲホゲホ

鬼神赤鬼「フン……王の息の根を止めようと思っていたが興が冷めた。だが思い出したぞ……この場にはもう一人目障りなガキが居たじゃねぇか」ザッ

鬼神赤鬼「出てきやがれ小娘、どうせ見物しているんだろう?モドキの人魚王を殺すよりも貴様の方が殺しがいがありそうだ」


692: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:18:33 ID:eXh

ヒョコ

ドロシー「んー?私は今回見学のつもりだったんだけどー?」

鬼神赤鬼「そんな言い分が通用すると思っているのか?俺は人間が殺せれば相手は誰だって構わねぇ…!日ノ本の人間だろうが余所の人間だろうがな」

赤ずきん「鬼神、やめなさいと言っているでしょう、今はドロシーを相手にする時じゃあないのよ。あなたはもうその肉体を赤鬼に返して頂戴」

鬼神赤鬼「断る。まだ俺は実体を保っていられるようだ、時間一杯は俺の自由に暴れ思うがままに殺す。それよりも小娘……」


鬼神赤鬼「指図をするなと言うのが聞こえなかったか……?」ギロリ


赤ずきん「……っ!」ゾクッ

鬼神赤鬼「この小僧に乗り移ってからというもの……一人の人間も殺せず苛立ちが募っていたが、ようやく…ようやく人間への復讐が叶う」

ドロシー「殺す?えっ?私を?アハハー!冗談キツいよー」ケラケラ シュッ

鬼神赤鬼「フン、貴様は随分と楽観的だな?状況の解らぬ馬鹿か、あるいは死を恐れてねぇのか……どっちにしろ」バッ

ヒュッ

鬼神赤鬼「俺はあの小僧のように甘くねぇぞ」グググッ

ドロシー「速っ!でもあんたじゃ私は殺せないよん♪殺すって言う時はね、ちゃんと殺せそうな相手に言わなきゃ失敗したとき顔真っ赤だよー?」クスクス

ドロシー「ってわけで、ドロシーちゃんは鬼神ちゃんを殺しまーす♪」ケラケラ


693: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:21:14 ID:eXh

鬼神赤鬼「面白い冗談だ小娘、人間を殺せると思うと愉快で仕方ねぇなぁ!」シュッ

ブオォンッ!

ドロシーの幻「クスクス、さすがは鬼神ちゃん!見事命中したね!」ファサァァ

鬼神赤鬼「チッ、幻像を交えるとは……小賢しいッ!」ギロリ

ドロシー「そいつは残像だ!……って一回言ってみたかったんだよねー!残像って言うかマッチの幻覚だけどね♪」ケラケラ

ヒュッ

鬼神赤鬼「…なに余裕面で無駄口叩いてんだ?」グググッ

ドロシー「うわっ、もう目の前!?鬼神ちゃんデカい図体なのに速いなぁ!」カツンカツン

ヒュッ

ドロシー「でも速さならちょーっとは自信あるけどねー?」ケラケラ

・・・

ロバ「赤ずきんちゃん!こりゃあまずいんじゃないかね?黒い鬼君は見たところ相当強い、あのお嬢さんもただ者じゃあない!我々音楽隊が巻き添えになるのは避けたいんだが」トコトコ

ネコ「そうにゃん!あれって熱狂的なんて次元を越えてるにゃん!」

赤ずきん「ええ、あなた達は倒れている人魚王とあの姉を少し離れた場所へ、巻き込まれたら命の保証が出来ないものね」

赤ずきん「人魚姫は私の後ろに居なさい。鬼神にはきっと活動限界が存在する、それまで待ちましょう。もうこうなればこちらからは手出しできない」

人魚姫『オッケー!とりあえずあの二人にちょっかい出されないようにしなきゃマジでマズいね……次元が違うって感じするし……』

赤ずきん「鬼神が負けるなんて無いでしょうけど……鬼神が死ねば赤鬼も死んでしまうから、不本意だけど鬼神を援護する形になるかしらね」

赤ずきん「けれどそれもあくまで緊急時だけ、時間が来て赤鬼の人格が戻ったらすぐに逃げましょう。繰り返しになるけどドロシーを相手にしている状態じゃないもの、今はね」


694: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:25:37 ID:eXh

鬼神赤鬼「素早さには自信ありか、ならば避けてみろ小娘!」ブオン

ヒュッ

ドロシー「クスクス、私の武器は魔法の靴だからね!流石にシンデレラのガラスの靴程じゃあないけど速度を上げる魔法くらいはお手の物だよん♪」ヒュッ

鬼神赤鬼「魔法だの呪術だのばかりに頼っているような小娘が俺を殺すとは笑わせる!」ヒュッ

ブオンッ チッ

ドロシー「わわっ!今のはやばかったよ!金棒の先っちょがおさげに当たっちゃってた!ちょっと舐めすぎてたかもしれないなー」ヒュッ

鬼神赤鬼「フン、その小賢しい魔法具がなければ貴様などとうの昔に肉塊だ」

ドロシー「それはちょっと困るなー、たかが挽肉でも私みたいな美少女だとグラムいくらになるかわかんないしね」クスクス

鬼神赤鬼「無駄口が多い小娘め、どうせ軽口を叩くのなら遺言の一つでも残した方が有意義ってもんだぞ」ググッ

ブオンッ

ドロシー「うーん、避けてばっかりじゃつまんないし、勿体無いけどちょびっとだけ手の内見せてあげようかな♪」ヒュッ

赤ずきん「まさか、また新たな魔法具を……!」

ドロシー「鬼神ちゃん相手じゃ時間稼ぎにもなんないかな?でもちょびっとだけ動きとめるくらいはできるかもねー」クスクス




ドロシー「枯れ木は無いけど花よ咲け!無数のつたで鬼神ちゃんを縛りつけちゃえ!」カツンカツン

ファサー


695: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:28:13 ID:eXh

ファサー バサササササッ

鬼神赤鬼「フン、次から次へと小細工ばかり達者な小娘だ」フンッ

赤ずきん「あの魔法具は【花咲か爺さん】の……!でもあんなに数多くのつたを出現させるなんて……!」

ドロシー「おー、驚いてる驚いてる!まぁ植物生成は元々の効果だけどさ、ドロシーちゃんが使うことによってぐーんと強化されてるわけですよ!」

赤ずきん「強化…ですって?」

ドロシー「魔法具にちょちょーっとこの靴の魔力を送り込んでやればね、元々よりグレードアップしたスペシャルな効果が期待できるんだよん♪アリスは魔力の底上げー?とかいってたけど、まぁ要するにパワーアップですよ」

ドロシー「それでも鬼神ちゃんの力なら引きちぎっちゃうかもだけど、これだけのつたが一度に襲いかかってきたら避けられないんじゃない?」クスクス


シュババー!


鬼神赤鬼「…つくづく人間は愚かで傲慢だ、小細工に頼りそれを自らの能力だと錯覚する。その上、この鬼神をねじ伏せられると信じている……」


鬼神赤鬼「実に滑稽!俺は鬼神だ、いくら数が多かろうと……たかが草木に縛られるほど軟ではないわ!」シュバッ

バササササッ ブオンブオン!

ブチブチブチー

赤ずきん「四方から襲ってくるつたを全てなぎ払ってる…やっぱりあいつはただ腕力の強いだけの鬼じゃない……!」

ブオンブオン ドスンッ

鬼神赤鬼「どうした小娘、余興は終いか?」

ドロシー「あははっ!ですよねー!でもドロシーちゃんのターンはまだまだこれからだよーん♪」カツンカツン

人魚姫『なにこれ……あの娘もなんかいきなり植物操っててヤバい感じだけど黒くなった赤鬼もそれ全部引きちぎっちゃうし……!』


696: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:30:04 ID:eXh

鬼神赤鬼「いや、小娘如きに時間を掛け過ぎた。貴様は次で仕留める」ググッ

ドロシー「次があればだけどね?私は鬼神ちゃんの弱点も知ってるんだから、いつだって倒せるんだよん?」クスクス

鬼神赤鬼「フン、貴様の減らず口に付き合う義理は無ぇな」ヒュッ

ドロシー「つれないな~!じゃあこっちおいでよ、私に触れることなんかできないけどね!」カツンカツン

鬼神赤鬼「またお得意の魔法具か。童の玩具自慢に付き合うのは終いだ、小細工ごと叩き伏せてくれるわ!」ググッ

ドロシー「私達には優秀なスパイがついてるからねー、青い鳥が教えてくれたよ。鬼神ちゃんの弱点はひ・い・ら・ぎ・♪でしょ?」クスクス

鬼神赤鬼「ほう……読めたぞ小娘の考えがな!」ヒュッ

赤ずきん「……さっきのつたのように柊を生やすつもりね…!?」ガチャ

ドロシー「ふっふふーん♪そのとーり!苦手な柊に囲まれたら鬼神ちゃんもずいぶん弱くなっちゃうでしょ?」クスクス

ドロシー「枯れ木…はやっぱないけど、柊よ!鬼神ちゃんの周りいーっぱいに生い茂っちゃえ!」ファサー

バササササササッ

人魚姫『辺り一面にトゲトゲした植物が……!ねぇ、あれ大丈夫?あの娘が言ってる感じだと、黒い赤鬼の弱点なんでしょ?ヤバくない?』

赤ずきん「柊の薬は赤鬼の中に眠る鬼神の動きを抑える……鬼神を弱体化させることは間違いないわね、どの程度かは分からないけれど」ガチャッ


697: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:34:01 ID:eXh

バササササーッ

ドロシー「クスクス、ほらほら!トゲトゲした柊をかき分けないと私のところには来れないよ♪でも来れるわけないっか!柊を避けてここに来るなんてできっこないし!」

鬼神赤鬼「……確かに、貴様を殺すにはこの柊をかき分ける必要がある。一切触れずにたどり着くのは不可能だ」

ドロシー「柊は鬼神ちゃんの弱点だもんね♪詳しくは知らないけど力を奪われちゃうのかな?」クスクス

鬼神赤鬼「教えてやろう、柊の葉は鬼神を弱体化させ本来の実力を発揮できなくさせる」

ドロシー「ふーん、弱体化!それって残念だよね、せっかく腕力自慢の鬼神ちゃんもこーんな葉っぱに触れちゃうだけで雑魚になっちゃうんだもんねー♪」クスクス

鬼神赤鬼「……滑稽だな、小娘」

ドロシー「なになに?こっけー?かっこつけて私に一撃も入れられない鬼神ちゃんが?」クスクス

鬼神赤鬼「ガーッハッハッハ!浅はか!浅はかよ小娘ェ!」ヒュッ

バサバサバサッ

鬼神赤鬼「俺をこんな草で倒そうってのか?随分と考えが甘いみてぇだな!」ダダダッ

ドロシー「あれ……?鬼神ちゃんなんで柊かき分けて走ってくるわけ?そんな風にしたら力を奪われちゃうんじゃ…!?」

ビュッ

鬼神「ああそうだ、鬼神は柊に触れると弱体化する」ビュオッ

ヒュッ

ドロシー「……ちょっと待ってよ、こんな一瞬で目の前までは走ってこれてんのに弱体化してるって!?嘘ばっかり…!」

鬼神赤鬼「嘘じゃねぇ弱体化はする。確かにするが……少し考え違いをしてねぇか?」ググッ

鬼神赤鬼「獅子が牙を失い爪を折られようとな、そんなもんは野良猫を殺すのに必要ねぇのさ。多少力を奪われようと、鬼が人間の小娘に劣る道理なんか有るわけ無ぇ!」グググッ

ブオンッ!


698: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:34:11 ID:eXh

ドロシー「あっ、ダメだ」

ドロシー「これ避けれない奴だー……」フッ

フラッ

ドロシー「……うわっ、最悪。こんな時にあの目眩か……」フラッ

フラッ

ドロシー「あれ……?」キョトン

赤ずきん(……?ドロシーの雰囲気が変わった……?)



ドロシー「えっ……?あっ……私……?」オロオロ

鬼神赤鬼「終いだ。地獄で浅はかな己を恨んでいろ!」

ドロシー「えっ、えっ!?誰か……た、助けて……!」




ガキィィィンッ

鬼神「……邪魔が入ったか」ギリッ

ブリキ「……」ギギギッ


699: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:39:59 ID:eXh

ドロシー「ブリキ…!」

ブリキ「帰りが遅いと心配してきてみれば……また無茶をしたのか?」

鬼神赤鬼「ほう、俺の一撃を耐えきるか……貴様、人間じゃねぇな?」ギロリ

ブリキ「今は……な」ギギギッ

鬼神赤鬼「ああ、思い出したぞ貴様…鬼ヶ島でこの小娘と一緒にいた輩だ。邪魔をするな、その小娘は俺が殺す」

ブリキ「……お前の行動は当然ともいえる、だが断る。こいつは殺させない」ググッ

ドロシー「ブリキ……早く逃げよう、私もあなたもあんな化け物にはかなわないよ……」ガタガタ

ブリキ「ドロシー……お前、その口調……まさか薬を飲み忘れたのか?あれほど飲み忘れるなと言っただろう…!」キッ

ドロシー「ご、ごめん……私の病気を抑える薬なのに……」

ブリキ「……いや、怒鳴ってすまなかった。今は一刻も早く逃げよう」

ザザッ

鬼神赤鬼「逃がすと思うか?人間じゃねぇなら貴様に興味はないが……その小娘は俺に殺意を向けてきた、殺されても文句は言えないはずだ」

ドロシー「……」フルフル

ブリキ「俺の連れが迷惑をかけたことは謝ろう。だが怒りを鎮めてくれ、今戦うのはお互いに避けたいはずだ」

鬼神赤鬼「いや、人間を殺せるなら俺はいつだって戦いを望むがな……まぁ良い、貴様ごと潰せば済む話だ」ググッ


ピクッ


鬼神赤鬼「……チッ、時間か。しばらく眠っていればいいものをあの青二才め……!」ギリッ


700: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:43:10 ID:eXh

ブリキ「どうやらお前も時間切れのようだな」

鬼神赤鬼「……チッ、鬼神である俺が小娘ごときを殺し損ねるとは……屈辱……!」ギリッ

ブリキ「肩に乗れドロシー、すぐに離れて薬を飲まないとまずい」

ドロシー「……」スッ

赤ずきん「……」

ブリキ「……赤ずきん」

赤ずきん「あら、ブリキのきこりが私に何の用かしら?随分と大人しくなったドロシーの代わりに挑発でもしてくれるのかしら?」

ブリキ「いや、ただ一言言わせてくれ……すまない、と」

赤ずきん「……その一言ですべてを許せというの?」

ブリキ「そんなつもりでは無い。ただ……勝手な言い分ではあるが……」

赤ずきん「……」

ブリキ「……こいつを救うためにもうしばらく……苦労をかけることになるだろうからな」

ドスドスドス…

赤ずきん「ドロシーを…救う…?」

・・・


701: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:46:33 ID:eXh

港町のはずれ

ブリキ「ほらドロシー、水だ」スッ

ドロシー「うん、ありがと」スッ

ブリキ「お前に単独で行動させたのは軽率だった……やはり次からは俺が必ず付き従う」

ドロシー「……ねぇブリキ、あなたがさっき話していた女の子って誰……?」

ブリキ「少々面識がある娘。ただそれだけだ」

ドロシー「私、あの女の子にそっくりな娘の夢を見たことがあるの」

ドロシー「あの女の子の住む村を狼に襲わせる恐ろしい夢、でも恐ろしいのはその惨状よりも私なの。周りの人たちがどんどん死んでいって泣きじゃくるあの子を見て……私は笑ってた。愉快な喜劇でも見ているみたいに」

ブリキ「…ただの夢だ。そういう偶然もあるだろう」

ドロシー「……でも近頃酷い夢をよく見るの、私が楽しそうに誰かを傷つける夢。それに起きてる時の記憶がほとんど無くて……」

ブリキ「疲れているんだろう、今日は薬を飲んで休め」

ドロシー「うん、アリスちゃんが私の為に作ってくれた薬だもん、きちんと飲んで元気にならないとね」ニコッ

ゴクゴク…

ブリキ「……」

ドロシー「……ぷはっ、生き返ったー!さっきは助かったよブリキー!もうちょっとで鬼神にベッコベコに殺されるとこだった、そんなのつまんないからねー」ヘラヘラ

ブリキ「気分はどうだ?怪我はしていないな?」

ドロシー「元気元気ー!でも気分は最悪かなー?青い鳥の情報が中途半端なせいで死にかけたしね、次会ったらローストにしてやろうよ」クスクス

ブリキ「……ああ、だが程々にしておけ。辛い思いをするからな」

ドロシー「どゆこと?まぁいいや、城に戻って寝よっと、今日はちょっと疲れたしー」ヘラヘラ


702: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:49:26 ID:eXh

しばらく後
海岸 岩場の影

・・・
・・


人魚王「……私は望んでいない。真実を知られたうえに捕えられるなど……」ギリッ

赤鬼「薬の効果は切れたみたいだが、流石に野放しにはできない。拘束されるのは少々苦しいだろうが、我慢してくれ」

人魚姫『赤鬼、そんな奴に優しくすることないって!そいつが何をやったか忘れたわけじゃないっしょ?』

赤鬼「そうだが……まぁ、やり方が間違っていたとはいえ、国の為にやったことだってんだから、どうもなぁ……」

髪の短い人魚「……随分と優しいのね、私もお父様もあなたを殺そうとしたのに。報復しないのね」

赤鬼「オイラ達は人魚姫の好きにさせてやりたいだけだ、だからお前達を殺す必要なんかないのさ」


ヒュンッ


赤ずきん「ふぅ……戻ったわよ。ようやく落ち着いたかしらね」

赤鬼「御苦労さん、ブレーメンの音楽隊には救われたな。無事に送り届けられたか?」

赤ずきん「ええ、元のおとぎ話へね。演奏が必要ならいつでも頼ってくれと言ってくれたわ。その代わり腕の立つセロ弾きに会わせろとか自我を持つハープを見たいとか注文をつけられたけれどね」フフッ

赤鬼「随分と音楽好きな連中だな」ガハハ

赤ずきん「それよりも、あなたは大丈夫なの?鬼神は……外に出せば力をつけてしまうんでしょう?今回はやむを得ないといえ、まずかったんじゃないの?」

赤鬼「まぁ、なんだ、まだオイラの意思で抑えられてはいるから急に暴れたりはしない、安心してくれ」

赤ずきん「そう、それならいいのだけど」

鬼神『安心しろ…か、よく言えたものだな?』

赤鬼「……」


703: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:50:38 ID:eXh

鬼神『相変わらず貴様にしか俺の声は聞こえない。未だ体の自由は利かない……だが、確実に俺の力は増大している』

鬼神『気づいているだろう?俺の意思が以前より鮮明に貴様に伝わっているはずだ。それも当然、俺が以前よりも深い場所まで貴様の精神を蝕んでいるからだ』クックックッ

鬼神『共存などという夢物語に俺をも巻き込むと貴様は語ったが……どうやら俺が貴様を支配するほうが近そうだな?』クックックッ

赤鬼「……鬼神」

鬼神『何だ?貴様の青臭い演説など聞くつもりは無ぇぞ?』

赤鬼「お前のおかげで人魚王に殺されずすんだ、ありがとうな。赤ずきんや人魚姫も無事だったのもお前のおかげだ」

鬼神『……』

赤鬼「だけどお前の言うとおり、鬼神の力に頼ってちゃあ共存なんて夢物語になっちまうな。オイラ自身で何とかできるようにならねぇと」ガハハ

鬼神『……フンッ、貴様自身で何とかできたとしても夢物語である事に変わりはない。いずれ現実を突きつけられ絶望する日が来る、その日までせいぜい足掻け青二才』フンッ

赤鬼「……もちろん足掻くさ、夢だからな。俺と青鬼の」


704: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:54:03 ID:eXh

赤ずきん「さぁ、これからどうしましょうね?人魚の王もお姉さんもこのままというわけにはいかないものね」

人魚姫『親父は国をまとめるために人魚を殺して、それを人間のせいにしたんだよ?それをそのまま無かったことにはできないって、人魚のみんなに教えないとダメっしょ!』

赤鬼「そうだが、お前はもう人間だ。どうやって海底の奴らに……」

赤ずきん「問題はそれよね、私達には海底へと行く術がない。海底の魔女に払える対価も持ち合わせていないしね」

髪の短い人魚「……何故、責めないの?」

赤鬼「んっ?」

髪の短い人魚「頭巾の娘さん、あなたは人間よね?なら何故私達を責めないの?人間は人魚に危害なんか加えていなかった、それなのに私達人魚は罪のない人間に憎しみを向けていた」

髪の短い人魚「けれどそれは……お父様が国の為に作り出した偽物の憎悪。お父様が国民たちに騙った人間の悪事は全て偽り。それに踊らされて、私達は人間を殺し続けていたのよ!?」

赤ずきん「人間を殺した罪は消えない、けれど王に騙されたあなたも被害者だもの」

髪の短い人魚「……私達が愚かだった。人魚を悪意から守り、平和を築いていると思い込んで歌っていたのに……実際に確執の種をまいていたのは私達だった…!」

人魚姫『……姉ちゃん』

髪の短い人魚「鬼さん、お父様は小瓶を持っていませんでしたか?小さな、一見すると中身のない小瓶です」

赤鬼「ああ、どんな魔法具を持っているか解らないから持ち物は預かってるが……これか?」スッ

髪の短い人魚「人魚姫の声が閉じ込めてあるはずです、封を切れば声が取り戻せるでしょう」


705: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)22:56:55 ID:eXh

ポンッ フワッ

赤鬼「よし、封を切ったぞ。どうだ、人魚姫?」

人魚姫「……うん、声出せてる感じする!ねぇねぇ、ちゃんと聞こえてる?」

赤ずきん「ええ、あなたの考えはずっと私達に届いていたから久しぶりという感じはしないけれどね」フフッ

髪の短い人魚「人魚姫、あなたには辛い思いをさせてしまったわね。正しいのはあなただったのに」

人魚姫「いいよ、姉ちゃんはそんなにボロボロになってでも私を救うために来てくれたじゃん?ちょっと口うるさいと思ってたけど、結局は優しい姉ちゃんだしさ」ヘラヘラ

人魚姫「それにさ!人間が悪くないってのはもうわかったでしょ?だからもう人魚が人間を恨む理由はないっしょ?これってマジで共存するチャンスだと思うんだよね!さっそくみんなにこのことを伝えてさ、人間と仲良く暮らそうよ!」

人魚王「甘い考えだな……」

人魚姫「は?そんな事ないっしょ!全部ウソだったんだからさ、人間は人魚を襲ってなんかいないんだし恨む理由がもうないじゃん」

人魚王「長い年月で成長した憎悪はそう簡単には刈り取れぬ。私が植え付けた憎悪は確かに偽りだが、国民たちの中で膨らんだ人間への憎しみはそう簡単には拭えぬ」

髪の短い人魚「解ってくれる国民もいるでしょうけど、きっと大多数の人魚は突然真実を告げられても……混乱する。一度植え付けられた人間への悪い印象はぬぐえない、そう簡単にはね……」

人魚姫「……なにそれ」

髪の短い人魚「それに……いくら国民の為とはいえお父様の行為は許されない、おそらく投獄は免れないでしょうし王家への不信感は確実に高まります。最悪、国家転覆なんて事も十分に考えられます」

人魚王「それを私は望んでいない。平和を維持する最善の方法は、貴様らが口をつぐむこと。今まで通り人間への憎しみを向け、人魚だけで平和に暮らすことだ」


706: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)23:00:04 ID:eXh

人魚王「今まで通り、人間どもは好きに暮らせばいい。人魚は人間を恨み続け、ディーヴァは時折船を襲えばいい」

人魚姫「……なんでそうなんの?」

人魚王「解らんのか?国民に真実を告げれば、規模の大小にかかわらず人魚の仲間内で争いが起こる。国家へ反逆するもの、人間を信用する人魚とそうでない者のいさかい、私が収めた南北の海域間の争いだって勃発する」

人魚王「それに…確かに私の言葉は偽りだ。実際、人間は人魚を襲っていない。だが、それは人間が心優しい種族だからか?いいや、違う…人魚の存在を知らないからだ」

人魚王「人魚の存在を知った人間が人魚に危害を加えないと断言できるか?人間は善人ばかりか?貴様が出会った人間に悪意を持っている輩は一切存在しなかったか?」

人魚姫「……それは、でも!」

人魚王「貴様等は私の行動を悪だと言うが、例え偽りにまみれていたとしても長い間海底は平和で人魚の間での争いは起きていなかった。だが、お前が善行だと信じている行動は争いを生み出す、確実にだ。違うか?」

人魚姫「だからって!罪のない人を犠牲にしてまで得た平和に意味なんか無いじゃん!」

人魚王「いや、平和であること自体に価値がある。そしてそれに導くことが王の務めだ」

髪の短い人魚「私は……お父様の行動は、やはり許されたものではないと思います。でも、人間と共存できるかどうかというのは…また別の問題よ、人魚姫」

人魚姫「はっ!?姉ちゃんまで何言って…!」

髪の短い人魚「お父様が国民を騙していた事は公表し、償ってもらいます。あとは人魚間での争いが大きくならないように対応する、それが最善だと思います。共存なんて……やっぱり難しいわ」

人魚姫「……」


707: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)23:05:27 ID:eXh

人魚姫「……ねぇ、赤ずきんと赤鬼はどう思う?」

赤ずきん「正直に言うと、全ての人間が人魚と平和に暮らせるとは思えない。他人を利用して利益を得ようとする輩は少なくないもの」

赤鬼「鬼は人間に被害を受けている、これはお前達と違って偽りなんかじゃない。人間が自分たちの利益の為に鬼を利用したことは事実だ」

人魚姫「……」

赤ずきん「でも、そんなのは種族どうこうの問題じゃないわ。人間だけで暮らしていてもそういう輩は居るもの」

赤鬼「そうだな、それに……これは俺も同じ状況に居たからわかるが」

赤鬼「人魚は人間を悪い奴だと思っている、だが実際はそうでない人間も多い。それを知って貰うことだ」

人魚姫「海底の人魚たちに…人間の良さを知ってもらえば、良いって事?」

赤鬼「人魚は人間の本来の姿を知らない、きっと人魚を利用する悪人だと思ってる。その印象を拭ってやればいいんだ……まぁ、口で言うほど簡単なことではないんだがなぁ」

人魚姫「実際に見てないから解らない、解らないから信じられない……だったら、人間にもいい人がいるって事を知っている人魚がそのことをみんなに伝えればいいじゃんね?」

人魚姫「人間と接したあたしが、海底に行ってさ!赤ずきんや赤鬼や桃太郎や王子や……人間との事話せば、きっと信じてくれるっしょ!」

赤ずきん「……ちょっと待ちなさい、海底に行くってあなた……」

赤鬼「自分で言っておいてなんだが…お前がそれをするには人魚に戻るしかないんだぞ?それがどういうことか解ってないわけじゃないだろう?」

人魚姫「解ってるって、あたしそこまで馬鹿じゃないよ。でもこれって私じゃなきゃできないじゃん?」

赤ずきん「声を取り戻したとしても、あなたに掛けられている呪いが解けた訳じゃあないのよ?それなのにあの魔女があなたをまた人魚にしたり人間にしたりするとは思えない、きっと今度は声以上の対価を要求するわよ?」

人魚姫「そうかもしんないけどさ、悲しいじゃん?本当は仲良くなれるかもしれないのに、諦めるなんてさ」

人魚姫「私は人魚になって、親父と姉ちゃんと海底に行くよ。そんでさ、人間との事みんなに話して……仲良くできるように頑張ってみるからさ」ヘラヘラ

赤鬼「……」

人魚姫「だからあたしを城に連れて行ってくれる?王子に会いたいんだ、それに声も取り戻したし」




人魚姫「最後くらいさ、自分の声で気持ちを伝えたいじゃん?」ニコニコ


709: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/24(日)23:09:35 ID:eXh

今日はここまでです

次回、声を取り戻した歌姫の運命はどうなるのか

人魚姫編 次回に続きます


710: 名無しさん@おーぷん 2015/05/24(日)23:10:55 ID:mrZ

うわあああああ
良いところでぇ
>>1さん乙です!
人形姫カワユス


711: 名無しさん@おーぷん 2015/05/24(日)23:45:12 ID:JCz

乙です
アリスの薬が気になるねえ


712: 名無しさん@おーぷん 2015/05/24(日)23:46:33 ID:TW7

>>1さん乙です!

鬼神が相変わらずカッコいいですが、ドロシーもワケありなようで…益々面白くなってきました!!

あとは人魚姫次第…
何となく終わりが近そうに感じました

とりあえず次回更新を楽しみに待ってます!!


717: 名無しさん@おーぷん 2015/05/26(火)09:33:42 ID:quC

乙!
鬼神がカッコよすぎてニヤニヤしてしまうわwww


718: 名無しさん@おーぷん 2015/05/26(火)20:15:27 ID:5vB

鬼神がカタコトじゃなくなってきてるな


723: 名無しさん@おーぷん 2015/05/31(日)20:22:51 ID:Vow

昨日追いついた
楽しみに待ってます
アリスちゃんに剣山投げつけられたい


>>723
アリス「出番がないからね、八つ当たりでよければしても付き合って貰おうかな?」


724: 名無しさん@おーぷん 2015/05/31(日)21:11:22 ID:R77

>>1の現時点の構想では何冊目まで出来てるんだろう、気になる。


>>724
うーん、一応最低であと三冊かな?実質最後の話はみんな予想してるだろうけどあのおとぎ話の予定
でもあと何冊かは未定だけど、全体のオチは決まってるからご安心を


729: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:12:04 ID:mx2

人魚姫の世界 城 客室(人魚姫の部屋)

人魚姫「えーっと、アクセ作る道具と素材っしょー?二人が用意してくれた洋服と桃太郎に貰ったアクセとー……あと何か忘れ物してないっけ?」ゴソゴソ

赤鬼「……」

人魚姫「忘れ物したら大変だかんね、二人ともちゃんと手伝ってよ?」ゴソゴソ

赤ずきん「……」

人魚姫「ちょっとー!二人ともテンション低すぎなんですけどー?もうちょっと楽しくやろうよ、ほらほらできるっしょ?」ヘラヘラ

赤鬼「楽しくってお前…無理を言うなよ、こんな状況で笑ってられるわけないじゃないか」

赤ずきん「私も同意見よ…友達が死を覚悟しているというのにヘラヘラ笑っていられないわ」

人魚姫「あははっ、死を覚悟したとか流石に大げさ過ぎじゃん?」ヘラヘラ

赤鬼「大げさなんかじゃない、事実だ。お前は王子に別れを告げた後、海底へ行くんだろう。人魚の王が部下用に作らせた人魚に戻す薬…そいつを飲んで人魚へ戻るんだ」

人魚姫「そうそう、海岸で姉ちゃん達と話した通りだよ。私は人魚に戻って、姉ちゃんと一緒に親父を連れて海底へ行くよ」

人魚姫「そんでさ、国民を集めて親父の悪事を洗いざらい白状させて…みんなに謝って、親父と王族の処分を決める。それからさ、人間は本当は悪くないって…良い人がたくさんいるって、わたしがみんなを説得する」

赤ずきん「包み隠さず事実を公にして王の悪事にケジメをつける。王族として自らも罰を受けるというのはあなたのお姉さんの意見だったわね」

人魚姫「姉ちゃんまじめだからさ、自分も相応の罰を受けるって言って聞かないんだよね。ちゃんと謝罪してさ、そんで国民がそれでも政治を王族に任せてくれるなら姉ちゃんが王位に就くことになんのかなー?」

赤鬼「全ての人魚が許してくれるとは考えづらい、家族や友人を王に殺された人魚も大勢いるんだ。それでも誠心誠意謝罪をすれば…お前の姉までひどい扱いを受ける事は無いだろう、あいつも騙されていたんだ」

赤ずきん「…けれど、あの王が罪を認めるとは思えないわ。いいえ、自分の行いが罪だと思ってすらいないもの」


730: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:13:52 ID:mx2

人魚姫「それなんだよねー、あんな親父でも国民には支持されてるからさー。やり方は最悪だったけど、南北の海域の争いを収めたのも人魚の世界を平和にしたのも親父だしさ」

赤鬼「確かにな、方法は褒められたもんじゃねぇが…あの王が国民の為、国家繁栄の為に行動して成功したってのは事実だもんな」

人魚姫「そうそう、だから逆に親父がなんかうまい事演説でもしちゃったら最悪なんだよねー…まぁとにかくさ、そうなってもわたしがちゃんとみんなに人間のいいところ伝えるから大丈夫っしょ」ヘラヘラ

赤鬼「お前がよく考えてだした結論だ、オイラ達は応援する。お前ならきっとうまく説得できるってのも信じてる。だが、なぁ……赤ずきん?」

赤ずきん「……ええ、ひとつだけ大きな問題があるわね」

人魚姫「あー……うん、わかってる」

赤ずきん「あなたの説得が成功して人間への憎しみが消えたとしましょう。……その結果として人魚が人間と交流を持つようになっても人魚王が残した爪痕は消えない」

人魚姫「それって人魚に殺された人間……の事っしょ?復讐の為に…正義の為に殺したと思ってたのに実はただの虐殺だった……なんて、悲惨すぎるって」

人魚姫「でも本当に悲惨なのは殺されちゃった人たちだよね。だってどんなに反省しても謝罪してもさ、殺した人間が帰ってくる事はもうないもんね。例え誤解だったとしてもさ、残された家族にはそんなこと関係無いもんねー……」

赤鬼「そうだな……被害者の家族や友人にとっちゃあどんなに人魚が反省し悔もうが人間に友好的になろうが人魚は大事な人を殺した憎むべき種族になっちまう」

赤ずきん「事の顛末を全て話しても……どんなに頭では理解していても、一部の人魚だけが悪いのだと解っていても全ての人魚に憎しみを向けてしまうでしょうね」

赤ずきん「もちろん、長い時間を掛けてお互いをよく知る事を繰り返すことで…次第に憎しみを向ける相手が間違っていると理解できるでしょうけど…それはとても時間がかかるしものすごく難しいわ」

赤ずきん「あなたが人魚の心を動かし、そして人間の心を動かせる先導者がいれば…いつの日か人間と人魚は共存できる。それは険しくてどこまでも続くように見える長い道のりになるでしょうけれど…いつか叶う、必ずね」

人魚姫「……うん、だからこそわたしは人魚に戻る。わたしが絶対に人魚を説得して人間に歩み寄れるようにする。マジで頑張るよ、これだけは絶対にね!」


731: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:15:01 ID:mx2

赤鬼「うむ、よぉし!お前が体張って頑張るってんだ、オイラ達が気を落としてちゃあいけないよな!」ガハハ

赤ずきん「そうね…私達にできる事は多くないけれど、それでも出来る事が無いわけではないもの」

人魚姫「うんうん、二人ともありがとね!じゃあわたしは王子の所に行ってくるかなー」ヘラヘラ

赤鬼「おう、それじゃあオイラが連れて行ってやる。声が戻っても歩くと足が痛むのは変わらないんだ、肩に乗ると良い」

赤ずきん「……赤鬼、そこは一人で行かせてあげましょうよ」

人魚姫「あははっ、嬉しいけどさ王子の所には一人で行きたいんだー」ヘラヘラ

赤鬼「うおっ、それもそうか……ならオイラ達は城の前で待っているとするか、そしたら海岸へ向かおう。すぐに海底に行くつもりなんだろ?」

人魚姫「うん、王子に会ったらすぐに行こう。姉ちゃん達が誰かに見つかったらまずいかんね」

赤ずきん「……それなら後でバタついてもいけないし、忘れないうちにあなたにはこれを渡しておくわね」ゴソゴソ

スッ

人魚姫「何これ?瓶に入ってるけど……石?キャンディとかいうお菓子?」

赤ずきん「いいえ、石でも飴玉でもないわ。石なんかよりずっと脆くて飴玉のようにすぐに消えてしまうだろうけど、この魔法具はあなたを助けてくれる。使い方はね……」

ヒソヒソ

人魚姫「……マジで!?これ絶対役に立つじゃん!でもレアな物じゃないの?いいの?」ヘラヘラ

赤ずきん「いいのよ、けれど少しずるいかしら?」フフッ

人魚姫「そんなことないって、もしもあいつがちゃんと謝らなかったら使うからさ!…じゃあ、赤ずきんにはお返しのプレゼントあげなきゃねー」ゴソゴソ

グイッ

人魚姫「特別な魔法具って聞いたけどわたしには必要ないから赤ずきんが役に立ててよ。わたしからのプレゼントなんだから大切にしなきゃおこだかんね?」ヘラヘラ


732: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:17:13 ID:mx2

赤ずきん「ええ、ありがとう人魚姫」ニコッ

人魚姫「あははっ、じゃあまた後でねー」ヘラヘラ

バタンッ

赤鬼「行っちまったな……」

赤ずきん「…そうね」

赤鬼「王子との結婚も諦めて、泡になって消える事を承知で…それでも種族共存の道を取るんだな、あいつは」

赤ずきん「もちろんそれは彼女の願いだけれど……むしろ王子を幸せにするという意味合いのほうが強いのかもしれないわね、共存できればこの港町はかつてのそれよりも繁栄できるでしょうしね」

赤鬼「自分の幸せより王子の幸せの為…か。愛した男の願いの為なら、例え自分が泡になっても……か、健気な奴だよあいつは」グスッ

赤ずきん「私は彼女がそれを望むのなら…それがあの娘の愛の形なら…人魚姫らしく王子を愛する事、それが一番の選択だと思う」

赤鬼「そうだな、あいつが消えた後も人魚姫の願いと想いはずっと生き続ける。そしていつか、二つの種族が解り合える日が来るなら、あいつは報われる」

赤ずきん「……ええ、人魚姫が泡になれば結果としておとぎ話が消える事はない。ずっとずっと、このおとぎ話の中には彼女の想いが生き続ける…そしてこのおとぎ話が消えなければ」

赤鬼「現実世界で人魚姫の想いはは生き続ける、か……そういえば、赤ずきん。人魚姫から何を貰ったんだ?」

赤ずきん「短剣よ。おそらく、お姉さんが髪の毛と引き換えに彼女に託した魔法具ね」

赤鬼「ああ、確か……『解魔の短剣』だ。元のおとぎ話にもあったが魔法を打ち消す事が出来るらしい、ただし魔法に掛けられている奴と強い絆で結ばれている奴の血液を浴びせる必要があるけどな」

赤ずきん「そう、強力な魔法具だけど……容易には使えないわね」

赤鬼「ああ、強力な魔法具だが魔法を解くために他の誰かを刺す必要があるからな……」

赤ずきん「もちろんそれもあるけれど……友達からの贈り物ですもの、大切にしたいのは当然でしょう?」


733: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:18:47 ID:mx2

城 王子の部屋

人魚姫「王子ー、入るよ?」

ガチャッ

王子「……zzz」スゥスゥ

人魚姫「寝てる…っていうか灯りつけっぱなしだし、作業しながら寝ちゃったのかも知んないなー…本とか紙の束もあちこちに山積みだし」ペラッ

人魚姫「これは多分この辺りの海図っぽいね?それと船の行き来の記録と……こっちは事故船の記録っぽいけど…うへー、全然わかんないんですけどー」ウヘー

人魚姫「わたしなんかちょっと読んだだけで頭痛くなりそうなのに、マジで頑張り屋だよー。王子は港の復興が夢だもんねー…だから寝る時間も惜しんで頑張ってるんだ、うんうん偉い偉いー」ヘラヘラ

王子「……zzz」

人魚姫「……」

人魚姫「でも大丈夫だかんね、もう姉ちゃん達は船を襲わないからさ。海難事故はもう起きない、王子の頑張りは報われるんだよ?……っていうか姉ちゃんが船沈めてた事黙っててごめん」

ナデナデ

人魚姫「これからは港から出た船はちゃんと戻ってこれるし、余所からの船だってたくさん来るようになる。ちょっと時間はかかるかもしれないけどさ、昔よりも立派な港にきっとなるよ」

人魚姫「そのころには町ももっと栄えてて、たくさんの船や旅人が来て町はもっと賑やかでみんな幸せに暮らすんだよ」

人魚姫「そしたら、そのころには王子は王様になってるのかな?だったら絶対良い国になるっしょ!」

人魚姫「立派な王様になった王子が、頑張って手に入れた大賑わいの港町を治めるんだ。余所の国にも、あの国の王様は立派だって褒められて……それで仲良くなった人魚と人間が一緒に暮らしてんの」

人魚姫「時間はかかるかもしれないけどさ…それでお互いに協力し合って生活するの。人魚と人間が仲良くして王子の夢も叶う、わたしが夢見たそんな未来に…この街は絶対になれる」



人魚姫「わたしはそれを見ることはできないけどさ、王子も幸せになれるって信じてるからさ」ニコニコ


734: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:20:48 ID:mx2

人魚姫「欲張り言っちゃうと……本当はわたしも見たかったんだけどさ、王子が立派な港町治めるとこ。でもちょっと無理っぽいんだよね」ヘラヘラ

人魚姫「赤鬼たちとも話してたけど、一部の人間にとっては人魚は悪い種族になっちゃうんだよね。王子ならきっと人魚の味方してくれるけど、そこで人魚のわたしが側にいたらきっと王子に迷惑かけるしさ」

人魚姫「初めのうちはどうしても人魚を嫌う人間はいると思う、でもさ王子が共存の為に頑張ってくれてもわたしがいたら『王子は人魚の恋人がいるから肩を持ってるだけ』とか言われたりさ、しちゃうとおもうんだよねー」

人魚姫「それってすごくつまんないよ、わたしが原因で王子まで辛い思いをさせちゃうのってさ。そういうの泡になっちゃうより嫌だな、わたし」

王子「……zzz……んんっ……」モゾモゾ

人魚姫「……あっ、王子ごめん。起しちゃったっぽいね」ヘラヘラ

王子「姫…?あぁ、しまったもう朝じゃないか……調べ事をしている最中に眠ってしまったみたいだ」

人魚姫「あははっ、あんまり頑張りすぎると良くないからさ、テキトーに休まなきゃだよー?」ヘラヘラ

王子「いや、そんな事よりも…!喋れるようになったのだね!?君は声が出せない病だと聞いていたが……治ったのかい?」

人魚姫「あー……うん、そんな感じ?」ヘラヘラ

王子「それは良かった、そうだ…!赤鬼や赤ずきんはもう知っているのかい?この良い知らせを伝えなければ…!」ソワソワ

人魚姫「二人とももう知ってるから大丈夫だって、だから王子のところに来たんだしさ」ヘラヘラ

王子「そ、それもそうだね。すまない、なんだか舞い上がってしまって…」

人魚姫「っていうか、王子がテンションあがんのおかしいじゃん?」クスクス


735: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:22:10 ID:mx2

王子「いや、しかし喜ばしい事に変わりはない。これからは君の想いをより理解できる、愛する人と昨日よりずっと解り合える…こんな嬉しい事はない」ニコッ

人魚姫「……」

王子「早速父上にも報告しよう、きっと喜んでくださるだろう!」

人魚姫「あー…それはいいんだけどさ」

王子「父上に報告した後、婚姻の報告をすませたいと思っているんだ。君を国民たちに紹介したい、私の妃として」

王子「君は心優しい女性だ、そのうえ透き通った声と可憐な美しさを兼ねている。きっと国民にも慕われるよ」

王子「海難事故の直後で大変な時期ではあるが…だからこそ良い知らせを国民は待ち望んでいるはず。さぁ、準備を整えたらすぐにでも…」

人魚姫「ちょ、ちょっと……!待ってってば、王子!」

王子「あぁ…そうか、私とした事が事を急ぎ過ぎてしまった。まだ君の両親に御会いしていないのに……ご両親に挨拶もしないまま婚姻など不躾だ」

人魚姫「そうじゃないって、それはどうだっていいよ」

王子「……?ならば、何だというんだい?」

人魚姫「わたし、王子とは結婚できない」

王子「っ…!何故だい?私に何か不満があるのならば言って欲しい!私は姫を愛しているんだ!」

人魚姫「それはわたしも同じだけどさ……わたし、王子に言ってない事があるんだ」

王子「一体それは何だというんだい?君も私を愛してくれているというのなら、その想いを押さえつけるほどの事情なのかい?」

人魚姫「…わたしは、本当は人間じゃない」




人魚姫「海のずっと深くに住む、人魚なんだ」


736: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:24:03 ID:mx2

王子「人魚というと…あの伝説や昔話に出てくる人魚の事かい?」

人魚姫「陸の上ではそんな風に思われてるんだっけ。うん、わたしは人魚の国の姫なんだ」

王子「ふふっ、言葉を交わすことで君の新たな一面を知れたようだね。姫がそんな冗談を言うとは思わなかったよ」フフッ

人魚姫「ちょ…冗談なんかじゃないっての!本当の話だって、わたしは魔法の力で人間の姿をしてるだけなんだって!」

王子「……しかし、とてもじゃないが信じられない。人間以外の種族が実際に居るというのも、どう見ても人間である君が…人魚だというのも」

人魚姫「わたしはチョー真面目だよ。あの日、まだ人魚の姿だったから沈んでいく王子を助けて岸まで運べたんだしさ。すぐ近くで船が沈んでいってんのに自由に泳いであんな沖から海岸まで泳ぐって人間にできる?日も落ちてたのに?」

王子「……確かに」

人魚姫「初めて王子を見たときさ、一目で気に入っちゃってさ。恋人になりたいって思ったんだ、それで色々あって……海底の魔女に人間になる魔法を掛けてもらったんだ」

王子「……冗談ではないのだね、姫」

人魚姫「マジで言ってるよ。今のあたしは水中で呼吸出来ないし尾びれも無いけどさ、王子なら信じてくれるっしょ?」

王子「困ってしまうな……やはり姫が人魚だなんて信じられないが、君の言葉に嘘があるとは思えない。おそらく真実なのだろう」

人魚姫「信じてくれて、ありがとね。それでこそ王子だよ」ニコニコ

王子「だが…君は自分が人魚だから人間である私とは結婚できないという考えなのだろう?」

王子「私は姫が人間だからという理由や命の恩人だから愛しているのではない。君だから愛しているんだ、例え人魚だとしても私の気持ちは変わらない」

人魚姫「ヤバっ…チョー泣きそう」ボソッ

王子「君が何故そんな事を気にするのかわからない、私には君が何者かなんて関係無いんだ」

人魚姫「……でもさ、この海域の船を沈めていたのが…人魚だって言っても、同じふうに言ってくれる?」


737: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:26:20 ID:mx2

王子「この海域の船を……沈めていた?あれは、あれは事故ではないのか!?」バッ

人魚姫「あれは事故じゃない、襲撃だったんだよ。海底ではね、人間は人魚を襲う悪い種族だって言われててさ……船を沈める役割を持つディーヴァっていう仕事があるんだ」

王子「……」ボーゼン

人魚姫「人魚の事情としてはさ、人間が悪人だって嘘を振りまいた奴がいて…人魚たちはみんなそいつに騙されてたって事だけど、人魚が人間を殺したのは事実だよ」

王子「何という事だ……」

人魚姫「……ごめんなんて言葉じゃ足りないってのはわかってるけどそれでも、私にはそういうしかないよ。ごめん……」

王子「……何故だ?」

人魚姫「だからさ、人魚の王…わたしの親父が国をまとめるために人間を利用してて……」

王子「いや、人魚が船を襲った理由では無くてね。君が何故それを私に教えたかを聞きたいんだ」

人魚姫「なんでって……」

王子「君が実は人魚で、人魚は人間を恨んでいて、船を沈めていたのも人魚…いずれも信じがたいがすべて事実だとするなら、君にとってその事を私に教えることは不利益しかないはずだ。それなのに何故、君は私に打ち明けたんだい?」

人魚姫「……」

王子「私が…人魚が人間を殺していたことや船を沈めた事を怒って君に危害を加えるかもしれない…そう思わなかったのかい?」

人魚姫「王子はそんな事しないっしょ。それに、わたしは人魚だってことも船が沈んだ理由も王子に隠してたからさ…仮にされても文句言えないし…」

人魚姫「それに王子は喋れない私を信じてくれたし、なにもかも隠したままにするなんて嫌だったって事。王子だったら、例えこんなことがあっても人魚の事を受け入れてくれるって信じてたし」


738: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:28:05 ID:mx2

人魚姫「誤解っていっても人間を殺した人魚が絶対に悪いよ?でもいつかはきっと仲良く暮らせると思うわけ」

人魚姫「っていうか仲良く暮らすのはわたしの願い。そうなれば港町の復興も手伝えて王子の願いも叶う、これがもう一個のわたしの願い。人魚の説得は私がする、だから王子にも共存の為に手伝ってほしい、そう思って王子に教えたんだ」

王子「君の願い…そして私の目標の為なら、例え危険な目にあってもどう思われようと構わなかったというのかい?」

人魚姫「…それはちょっと違うかなー?王子に嫌われるのは絶対嫌だし、でも王子なら頭ごなしに怒ったり否定しないって信じてたしさ。ほら、実際にこうして話を聞いてくれてるじゃん?」ニコニコ

王子「……だとしても、決断には勇気を必要としただろう。実際、私も事故で友人を失っている……君が私にとって特別でなければ……どうしていたかわからない。それなのに君はそれを覚悟で真相を告白するほど、種族の共存を強く願っているんだね?」

人魚姫「そんな立派な感じじゃなくてさ、ただ欲張りなだけだよ。わたしには人魚の家族も友達も人間の友達も恋人もいる。だからどっちとも仲良くしたいだけって感じかな」ヘラヘラ

王子「……わかった、愛しい姫。約束しよう。すぐに結果は出ないだろう、茨の道になってしまうと思うが……私は君に協力する。人間が人魚と手を取り合う未来に向けて、出来る限りの助力をしよう」

人魚姫「本当!?王子ならそう言ってくれるって信じてた!」ギュー

王子「や、やめたまえ抱きつくのは…!」ジタバタ

人魚姫「誰も見てないなら良いって昨日言ってたじゃん?忘れちゃったとか言っても納得しないかんね?」クスクス

王子「むむぅ……だが、これでもう君が婚姻をあきらめる理由はないはずだよ?」

人魚姫「……」


739: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:29:52 ID:mx2

王子「君が種族の共存を望むなら、君と私の婚姻はそれが可能な事を証明する材料にもなる。だから改めて私は君に……」

グイッ

人魚姫「あははっ、ごめん王子。それはできないや」ヘラヘラ

王子「……姫っ!」

人魚姫「確かに王子の言う通りかもしれないけどさ、やっぱり私達の関係は人魚を嫌う人たちの目には良いものに映らないよ。何かを憎んでる人がどういう感情を持つかなんて、子供の時からいっぱい見てきたから知ってんの」

人魚姫「私たちの関係はいい影響より、悪い影響のほうを強く生むと思うんだ。だからできない」

王子「何故だ!?……君がそこまで耐えなければいけない理由はなんなんだい!?どうしても無理というのなら…私は夢や王子という地位を捨ててでも君と……!」

人魚姫「ストップ!それ以上は言っちゃだめだって。王子が諦めてどうすんの?王子の夢は私の夢なんだからそんなの許さないかんね?」

王子「しかし……!」

人魚姫「ごめん…それに私はもう一個王子に隠してる事があるんだよね」

王子「それがいまさら何だというんだ、君が何を隠していたとしても私はもう驚かない…!」

人魚姫「私の歌を聞いた王子は……『寝ちゃう。でも夕方くらいまでね』……」スゥッ

ラーラララーララー

王子「何故だ……突然、睡魔が……まさか姫、君の……」バタッ

王子「……zzz」


740: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:34:06 ID:mx2

人魚姫「ごめんね王子、夢を捨ててまでわたしと一緒に居たいって思ってくれたのは正直うれしかったけど…」

人魚姫「やっぱり、夢を叶えて幸せになってよ。王子の夢はわたしの夢、その方がわたしも幸せだしさ」ヘラヘラ

人魚姫「でもさ、わたしの事は忘れちゃった方がいいよ。わたしはもうすぐ泡になって消えるんだ、もう会えないのに思い続けるのって辛いしさ。だからさ、こうしよ」

人魚姫「わたしの歌を聞いた王子は……『目覚めたら、わたしの事全部忘れてる。助けられたことも、恋したことも、存在も全部』…そんで、どこかの優しくて可愛くてさ王子の事大好きな女の子と結婚して、一緒に夢をかなえてよ」スゥッ


人魚姫「……」


人魚姫「……ダメだ、やっぱこれだけは出来ないや……。完全にわたしのわがままだけど、全部忘れるとか、他の女の子と結婚するとか……マジで辛すぎるし……そう思うとどうしても、声が出ない……」ポロポロ

王子「……zzz」

人魚姫「ごめん、王子。王子に辛い思いさせるの嫌とか言ってたくせに、結局わたし自分のことしか考えてないや……わたしは王子に忘れられるのだけは……マジ無理だよ」ポロポロ

人魚姫「どうしても……この恋が無かった事になるのは……耐えられない……」ポロポロ


人魚姫「……」グスングスン


人魚姫「……もう会えなくてもわたしはずっと王子の味方だかんね……だからわたしの歌を聞いた王子は……『夢をあきらめない』。いつか絶対に自分の力で叶えられる」ラーラララーララー

人魚姫「……わたしはもう行くね、でも無理しちゃだめだかんね?わたしがいないからって無茶したらおこだかんね?」クスクス

ナデナデ

人魚姫「じゃあね。バイバイ、王子」スッ

バタンッ


741: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:36:20 ID:mx2

・・・

数時間後 海底 珊瑚で出来た王宮

ザワザワ ザワザワ

執事魚「えぇーっ!?人間が人魚を襲っているというのは人魚王様の虚言だったんですか!?」

人魚重鎮「その上、被害者の人魚を手に掛けていたのは人魚王様御本人…!?」

人魚兵長「こ、このような事前代未聞ですよ!?いくら平和の為とはいえ国王様が民に手を掛けるなど…!」

ザワザワ ザワザワ

人魚姫「王宮の中心人物だけ集めて会議しただけでこれだけ大騒ぎになんだもん、国民に説明する時はこんなもんじゃないだろーね」

髪の短い人魚「しかし、お父様の悪事は見過ごせるものではありませんからね。もうすでに国民には王宮前に集まってもらうよう連絡を回しています」

人魚姫「後には引けないってことかー……今更、そんなつもりないけどさ」

人魚王「……」モガモガ ギロリッ

人魚兵「しかし、とても信じられない…!国王様が…!」

人魚兵2「だが、仲間の兵が帰ってこないのだって一部は国王様が殺害したからだって姫様は仰ってるし、姫様が嘘を吐いているようには思えないぜ」

人魚兵「ああ、髪の短い姫様はファザコン気味だったしな……国王様を裏切るとは思えないし…」

人魚兵2「そうだよな、しかし……国民がどういう反応を取るか……」

執事魚「姫様、どうして人魚王様の口を縛っておられるのですか?」

髪の短い人魚「……虚言を吐いたとはいえ、お父様の功績は事実ですから……お父様が言葉巧みに兵や国民を騙す可能性は拭えませんからね」


742: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:38:02 ID:mx2

執事魚「しかし…人魚王様が自らの行いを認めなければ、国民も納得しないのでは…?兵士の中にも信じ切れずにいるものが多くいるようですし…」

ザワザワ ザワザワ

「マジか…?えー…マジで?転職考えるか?」
「うーん、しかしあの国王様が……でも姫様は嘘付いてないだろ、あの方は真面目だから…」
「確かに国王様は姫様への暴力とかやり過ぎなところはあったけど、流石に人魚を殺すとかないんじゃ…?」
「でも傷だらけの姫様もそれはそれで……」

ザワザワ ザワザワ

人魚姫「うん、だから親父の口から直接言わせる。自分がした事と、国民への謝罪をさ」

髪の短い人魚「問題は、お父様が素直に応じてくださるかどうか……」

執事魚「少し、難しいのではありませんか?今だから言いますけど……国王様は少し御自分の考えに固執し過ぎるところがありましたから、だから姫様の意見など聞き入れてくれませんでしたし」

髪の短い人魚「そうですね……まずは私から国民の皆さんに事の顛末と謝罪を行い、そのあとにお父様に自白していただく予定ですが……」

人魚姫「もうそのお父様って言うのやめなよ姉ちゃん、こいつは国を守るためにみんな騙してたんだよ?悪い奴じゃん」

髪の短い人魚「人魚姫、私はお父様がこれを機に心を入れ替えてくださればと思っているんです」

人魚姫「えー…?無理っしょ、だってそもそもが守るために守るべきものを殺すって発想……普通なら出てこないって」

髪の短い人魚「しかし、お父様の行動の根本にあるのは平和を望む心、まだお父様はやり直せると思うの」


743: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:40:21 ID:mx2

人魚姫「そんなにうまくいかないと思うけどなー……」

髪の短い人魚「容易くない事を夢見ているのは、私もあなたも一緒よ?人魚姫」フフッ

人魚姫「うー、それ言われちゃうと…反論できないんですけどー……」

執事魚「しかし、もしも大勢の前でまた虚言を漏らされては…!場合によっては姫様達を犠牲にする可能性もありますよ!?」

髪の短い人魚「可能性はありますね、お父様にとっては平和の為なら私達を娘としてみてくださらないですから……」

人魚姫「姉ちゃんが親父がまともになる可能性を信じてるってなら……まずは親父の様子を見るよ、予定通りちゃんと直接悪事を告白して貰うことにしてさ」

執事魚「でも、もし、素直に白状されなかったらどうするんです?何か起こってからでは対応が遅れてしまいます…大勢の国民が暴徒と化したら、兵を失っている我が国の軍では…」

髪の短い人魚「お父様の願いは平和です、そのような無茶はしないと思いますが…しかし、あなたには何か考えがあるのですか?人魚姫」

人魚姫「考えって言うかさ……友達に貰った魔法具があるんだ、本当は初めから使ってもいいかなって思うけど、やっぱ親父が罪を認めないときに使うよ」

執事魚「魔法具…いったいどのような…?」

人魚姫「それはその時まで秘密、親父の耳にはいっちゃまずいもんね」

ザワザワ ガヤガヤ

人魚兵「姫様方!お時間です、国民もすでに集まっております……では壇上の方へ、お願いいたします」

髪の短い人魚「いよいよ……ね。うまくいってもいかなくても、私達人魚の世界の歴史が動く瞬間……」ゴクリ

人魚姫「そんなに緊張しなくていいじゃん、むしろ今まで私達の歴史なんて親父の嘘で固められた偽物だったんだしさ」


人魚姫「だからこれは始まりだよ、人魚の世界の。ううん、人魚と人間の歴史のね」


744: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:42:22 ID:mx2

海底 珊瑚で出来た王宮前 

人魚姫「うわっ、これすごいね……めっちゃ集まってんじゃん」

髪の短い人魚「ここからは公の場です、言葉遣いには注意なさい」キリッ

人魚姫「えー、やりにくいなー……」

髪の短い人魚「…普段のような口調では、国民の信用も得られませんよ」ボソッ

人魚姫「うん、わかった…ですわお姉様」

ワーワー ザワザワ ワーワー

「今日は重要な報告があるって事だったが…なんなのかね?」
「人魚姫様の奪還に成功した報告じゃね?」
「しかし、一番上と下の姫様だけで…国王様がおられないようだ」
「見ろよ、一番上の姫様今日もボロボロだぜ、我々の為に戦ってくださったから…人間ども許せん!」
「キャァー!姫様ー!ショートも似合ってますわー!」

「皆の者、静粛に!静粛に!」

ザワザワ……シーン……

髪の短い人魚「みなさん、本日は突然のお願いにも係わらずお集まりいただき感謝しております」

髪の短い人魚「本日皆様にお集まりいただいたのは、我々人魚のこれまでと……そして今後について、重大な報告があるからです」

髪の短い人魚「私達は昨日、国王陛下の指揮の元…人間の住む陸地へと侵攻を試みました。そこで…私にも信じられない真実を知ったのです」


745: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:43:54 ID:mx2

「あの姫様でも知らないって相当だよな?なんだろ……」
「人間共の更なる悪事に違いねぇだろ…!あいつら恐ろしい奴らだからな…!」
「しかし、それにしても国王様…ま、まさか!?人間の卑劣な刃に…?」

ザワザワ

「静粛に!静粛に!」

髪の短い人魚「これは我々人魚にとって、非常に信じがたい事実でした」

髪の短い人魚「以前より、我々人魚は相次ぐ人魚の行方不明…及び誘拐死亡事件に悩まされてきました。そして、その悪事は……」

「人間だー!全て人間の仕業だー!あいつらをぶち殺せー!」
「そうだそうだー!こっちには姫様の歌声があるんだ!あんな奴ら一捻りだぜ!」

髪の短い人魚「…違います、人魚が襲われていたのは人間の仕業では無かった。それどころか、人間達は私達人魚の存在すら知り得なかったのです」

ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

「はっ?なに?どゆこと…?」
「姫様は何を仰って…人間が我々の敵では無いなど…ありえんですぞ!」
「きっと極悪な人間に言いくるめられちまったんだ!姫さまー!目ぇ覚ましてくれー!」

髪の短い人魚「いいえ、目を覚ますのは私達人魚の方だったのです。兵士長、お父様をこちらへ」

人魚兵長「はっ!只今!」ザザッ



髪の短い人魚「私達人魚を襲っていたのは……この国を治める王、人魚王だったのです」


746: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:45:29 ID:mx2

ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

「ちょ、姫様ー!いくらなんでもそんな冗談……!」

髪の短い人魚「皆様が驚かれるのも無理ありません、私も信じられませんでした」

髪の短い人魚「ですが…国王陛下自ら人魚を殺し、それを人間の仕業だとすることでこの国は団結を増し、平穏な日常を手に入れていたのです」

髪の短い人魚「陛下は国の平和の為と称し、罪のない人魚を……」

「ちょっと待ってくれ姫様!そんな突拍子もない事言われて信用できねぇよー!」
「そうだそうだー!俺達の人間への怒りを何かに利用しようってならいくら姫様といえど許せねェぞー!」
「国王陛下はどうしたー!陛下が直接申し開きをしてくれねぇと信用できねぇー!」

ザワザワザワザワ

人魚王「……私はここだ、皆の衆」ユラユラ

「こ、国王陛下!?何故そのように縛られておいでで……!」
「国王様ー!姫様の言葉は事実なのですか!?そんなことありませんよねー!?」
「国王陛下ー!真実を、真実を我々国民に!」

人魚王「案ずるな、我は少々……手を打ち損じただけだ。おい、私が演説を開始する……貴様ら、余計な口出しをせぬように」ボソッ

髪の短い人魚「……はい、きちんとした謝罪。お願いします、お父様」スッ

人魚姫「……」


747: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:52:24 ID:mx2

人魚王「まず、このような大きな騒ぎになった事を諸君に謝罪しよう。すまなかった」

人魚王「平和に暮らす皆の衆を呼び出した事、心苦しく思うが……だが更なる平和の為、大目に見て欲しい」

人魚王「我々は昨日、陸地へと侵攻した……そこで新たな種族に遭遇した。鬼と呼ばれる……悪魔のような角と海獣の如き巨体を持つ恐ろしき種族だ」

髪の短い人魚「……」

人魚姫「……赤鬼の事、恐ろしいとか…!」イライラ

人魚王「そこで出会った鬼という種族…本当に恐ろしいのは身体能力の高さでは無かったのだ……!」

ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

人魚王「……貴様等、私が民衆の前で謝罪をするなどと……よくもそのような夢物語にすがったものだな」ボソッ

髪の短い人魚「やはり…駄目なのですか?もう、良いでしょうお父様……これ以上、被害を広げる事は……!」

人魚王「私は間違っていない。今まで通りに事を運ぶ事が一番なのだ。私のシナリオはこうだ、『精神を操る鬼という種族の魔手に長女である貴様が犠牲となり、我を捕え虚言を吐いている』とな」

髪の短い人魚「お父様…!何故、何故わかってくださらないのですか…!お父様の望む平和はほかの形で手に入れられます!」

人魚王「わかっていないのは貴様らだ。最優先すべきは真実でも立場でも威厳でも無い、平和を得ることだ」

人魚王「平和こそ全て、争いが起きず全ての民が過ごせるならそれが一番なのだ」


748: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:55:40 ID:mx2

人魚姫「よーくわかったよ、姉ちゃんがあんなに言うからさ……ちょっと様子見たかったけど、もういいっしょ?姉ちゃん」

髪の短い人魚「……」

人魚王「フン、我に演説の自由を与えた時点で貴様等の負けだ。私は瞬く間に民衆を味方につけ、新たな悪である貴様等を討ち……平和を取り戻す。貴様等には鬼に操られた哀れな人魚として、我が国の平和の礎となってもらう」

ババッ

人魚王「皆の者、よく聞いてほしい!愚かにも私の娘は鬼という種族の魔手によって……」



コロンッ

人魚王の声「皆、よく聞いてよ…いや、よく聞くのだ皆の者!!」

人魚王「何っ…?」バッ

人魚王の声「人魚を殺してたのは実は人間じゃない、人魚を殺していたのは親j…いや、このわたし……!」

人魚王の声「この国王が、人魚を襲撃した張本人!私こそが全ての元凶だったんだ!」

ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

人魚王「……なんだ、この声は……!貴様か…貴様の仕業か……!」ギロリ

人魚姫「さぁ…私には何の事かよくわかんないんですけどー?どうすんの親父、いやおとーさま?」ヘラヘラ


749: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/05/31(日)23:59:31 ID:mx2

今日はここまでです

使い古しの小さな魔法具。
そして王子のキャラ付けに限界訪れる、王子何人出てくるんだよこのss

人魚姫編 次回に続きます


750: 名無しさん@おーぷん 2015/06/01(月)00:01:35 ID:NUB

乙です
ホント人魚王ゲスいなw


751: 名無しさん@おーぷん 2015/06/01(月)00:11:28 ID:37i

乙です
また声が変わる魔法具出てきたww チョークかと思ったけど玉って言ってるしなんだろうね?


>>751
言ったっけwこの魔法具はお察しの通り……


754: 名無しさん@おーぷん 2015/06/01(月)22:32:10 ID:k5l

救いようがねぇなクズ王www
もう殺しちゃいなよwww


755: 名無しさん@おーぷん 2015/06/01(月)23:09:05 ID:cp9

人魚王のクズっぷり一覧
・娘を兵器扱い
・娘への暴力と暴言
・娘を拘束するため鉄を打ち込む
・薬の力を試すために兵を殺す
・国をまとめるため国民を殺す
・それを人間の仕業にして人魚の憎しみを煽る
・口封じに部下を殺す
・娘誕生の第一声が「能力を教えろ」
・拘束されても反省すらしてない
・真実を公表されると、娘の発言は操られてのものだと嘘をつく(未遂)
・その際、鬼は精神を操る能力があると嘘をつく(未遂)

海底で改心するかな?とか思ってたらそんなことはなかった
清々しいクズっぷり


>>755
こうして見るとひでえな……


>>755
コレは酷い、いや我ながら酷い


760: 名無しさん@おーぷん 2015/06/03(水)21:07:35 ID:U36

これチョークだとしたらアリスちゃんと間接キスか

ひらめいた!





次の話
人魚姫編7



キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」六冊目
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1424001836/
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。