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妹「くちゃくちゃくちゃ」4

シリーズ
妹「くちゃくちゃくちゃ」1
妹「くちゃくちゃくちゃ」2
妹「くちゃくちゃくちゃ」3
妹「くちゃくちゃくちゃ」4
妹「くちゃくちゃくちゃ」5



116: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:13:39 ID:JRL



医者「これでしばらくは大丈夫だと思います」

兄「……ありがとうございます」

医者「薬の効果で妹さんは眠ってますが、意識を取り戻したら万が一のこともあります」

医者「一応看護師に見させておきます。ですから今日は帰っていただけますか?」

兄「……はい。ホントにすみませんでした」


兄(結局、あのあと自暴自棄になって暴れだしたアイツをおさえることが俺にはできなかった)
  
兄(医者を呼んで、なんとか妹を落ち着けることができた)

117: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:17:41 ID:JRL



兄「ただいま」

母「おかえり」

兄「今日飯はいいわ。風呂入ってさっさと寝たい」

母「……さっき、病院から連絡があったよ。しばらく妹には会えないって」

兄「……ごめん」

母「アンタまで謝んないでよ」

兄「……」

母「あのさ、アンタには話さなかったことなんだけどね」

母「あの子が受験に落ちたときの夜のこと」

母「あの子、わたしの部屋まで来て、急に泣き出してね」

兄「……」


118: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:24:16 ID:JRL

母「『受からなくてごめんなさい』って泣きながらずっと謝ってきたの」

兄「……母さんはどうしたの?」

母「なにもできなかった」

母「あの子の頭を撫でることしか、わたしには」

兄「それは……仕方ないだろ。ほかになにができたんだよ」

兄「大学に受からなかったからって叱るのかよ」

母「でも、あの子は下手な慰めの言葉なんかよりそっちを望んでいたのかもね」

兄「……」

母「わたしは受験に受からなかったからって叱るのは間違いだと思う」

母「でも慰める以外にも、もっとなにかできたんじゃないかって……最近になって思うの」

母「それに……」

兄「?」


119: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:25:14 ID:JRL

母「わたし、アンタが志望校に受かった時点で大学受験のことなんてどうでもよくなってたのかも」

兄「それはどういう……」

母「ごめん。これ以上は言いたくない」

兄「……そうか」

母「ただ、賢いあの子はわたしがなにを思っていたのか、わかっていたのかもね」

兄「……」

母「わたしもご飯食べたら早く寝る」

母「今日はなんにもしてないのに疲れちゃった」

兄「……」


121: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:28:33 ID:JRL



妹『へへ、兄ちゃんこれ見て!』

兄『なにその賞状? 皆勤賞かなんか?』

妹『残念ながら今年はインフルエンザにかかったから皆勤賞はとれてないんだなあ』

兄『じゃあなんだよ、その賞状』

妹『英検二級合格の賞状だよ』

妹『たしか兄ちゃんもこの前、受けてたよね?』

兄『俺は一次試験すら受かってないけど』
  
兄『ん? お前って今何年生だっけ?』

妹『妹の学年ぐらい知っておいてよ。 ピチピチの高校一年生だよ』

兄『高3の俺が取れなかった英検を……』

妹『ちなみに一発合格です』


122: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:31:21 ID:JRL

兄『そ、それくらいで自慢するな』
 
兄『世の中には八歳で英検二級に合格する子供だっているんだぞ』

妹『そんなすごい人と比べられても』

妹『ていうか、兄ちゃんが威張ることじゃないでしょ?』

兄『……なんかお前ってさ』

妹『うん』

兄『挫折とか知らなさそうだよなあ』

妹『んー、確かに諦めたことはないかも』

兄『おかしいなあ。俺はささいなことでもしょっちゅう蹴つまずくのになあ』

兄『いいところは全部お前に持ってかれたか?』

妹『あははは、かもねー』


123: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:36:37 ID:JRL



看護師「……で、なんでキミは来るなって言われたのに、また病院に来たのかなあ?」

兄(たしかに言われた。でもまた来てしまった、病院に)

看護師「妹ちゃんが大好きなのはわかるけどさ」

看護師「キミの妹ちゃんは誰とも会いたくないって言ってるし」

看護師「あの子の担当医師も、なるべく人との関わりを減らしたほうがいいと申されたよ」

兄「看護師さん、妙にうちの妹について詳しいですね」

看護師「昨日の事件はあっという間に病院中に広まったんだよ」

兄「……さいですか」

看護師「とにかく、キミは妹ちゃんとは会えないから帰ったら?」

兄「……看護師さんはもう帰るんですか?」

看護師「今日は早番だったの。おわかり?」


124: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:41:17 ID:JRL

看護師「まっ、わたしは定時と同時に堂々と帰るからね。残業なんてゴメンだし」

兄「なんか看護師さんって図太いですよね」

看護師「よく言われるし自分でもそう思う」

兄「看護師さんは一生鬱病とは縁がなさそうですね」

看護師「どうかな。わたしもあるとき急になってるかもよ?」

兄「想像したくないですね」

看護師「わたしも。鬱病になった自分なんて想像したくないよ」

兄「……」

看護師「まあわたしからすれば、キミこそ鬱病とかにならなさそうだけどね」

兄「……そうですか?」


125: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:43:56 ID:JRL

看護師「うん。なんていうか、最初から色々と諦めてる、みたいな? 」

看護師「なんつうか、ギラギラしたものを感じないんだよね」

兄「僕、自分で言うのもなんですけどたしかにがっついたりはしないですね」

看護師「キミ、彼女いないでしょ?」

兄「い、いますよ」

看護師「いないね。いたらわたしの今月の給料全額あげる」

兄「……いません」

看護師「ほらね。がっつかない」

兄「……そうみたいですね」


126: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:46:56 ID:JRL

看護師「鬱病になる人って目標があったり意思の強い人のほうが多いわけ」

兄「……なるほど」

看護師「キミの妹さんも目的や目標のあるタイプの人間だったみたいだねえ」

兄「ええ。アイツはいつでも目標に向かってがむしゃらにがんばってましたよ」

看護師「だから派手に転んで、そのまま病気になったわけだ」

兄「……」

看護師「目標や夢がないキミやわたしみたいな人間は、本当の意味での挫折がほとんどないからね」

兄「……そうですね」

兄「ぼくは仕事場でけちょんけちょんにされて憂鬱になっても、夢に挫折して鬱病になったりはしないでしょうね」


127: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)20:50:19 ID:JRL

看護師「……わたしもさ、昔はすごい漠然としてたけど、夢があったんだよ」

兄「なんですか?」

看護師「ナイチンゲールみたいな看護師になりたかったんだよ」

兄「漠然というか、てきとうですね」

看護師「ははっ、わたしの性格をそのまま表したかのような夢だよね」

兄「でも、ナイチンゲールの部分を除けば夢は叶ってるじゃないですか」

看護師「看護師になるなんて車の免許とるのと大差ないよ」

兄「そんなことはないでしょ」

看護師「バカ看護師、略して『バカンゴシ』って言われてるわたしが言うんだ、間違いない」


129: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)21:48:21 ID:JRL

兄「でも、きちんと働いてるだけでもすごいと思いますよ」

兄「僕なんて就活すらまともにしてないし」

看護師「ヤバくない、それ?」

兄「はい。このままだとニートかフリーターかの二択です」

看護師「なんなら今から専門行って看護師目指したら? 」

看護師「看護師は需要あっていいよ」
     
看護師「あ、ただし勤務先だけはめちゃくちゃ吟味したほうがいいよ」

兄「妹が5歳ぐらいの頃は『看護婦さんになる』とか言ってたなあ」

看護師「看護婦とか懐かしい響きだね」

兄「ぼくは看護婦って響きのが好きですけどね」


130: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)21:52:43 ID:JRL

看護師「前から気になってたんだけど、キミってシスコンなの?」

兄「なんでぼくがシスコンなんすか?」

看護師「だってねえ?」

兄「心外ですよ。ぼくはただ……」

看護師「ただ?」

兄「……すみません」

兄「それっぽいことを言おうと思いましたけど、言葉が浮かばないんでやめます」

看護師「やっぱりシスコンなんじゃん」

兄「いや、だから……」

看護師「昼すぎにはここにいること多いし」

看護師「それとも大学の授業って昼からはないとか?」

兄「そういう場合もあります。ありますけど」

看護師「基本的にはサボってるんでしょ」


131: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)21:56:58 ID:JRL

兄「なんて言えばいいんだろ。僕にとってアイツっていうのは……」

看護師「恋愛対象?」

兄「人が真剣に話そうとしてるんだから茶々を入れないでくださいよ」

看護師「ごめんごめん。続けて」

兄「だから、アイツはぼくにとって……光みたいなもの……なのかな?」

看護師「光?」

兄「ぼくが見てきたアイツは、なんていうか……生き様がカッコイイっていうか……」

看護師「……」


132: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)21:59:08 ID:JRL

兄「そう、ずっと見守っていきたい。そんなヤツなんですよ」

看護師「でもキミの妹さんは」

兄「はい。今のアイツは以前の面影すらありません。 だから……」

看護師「なんでそこで間を置くんだよ」

兄「あ、いや、ちょっと言うのが恥ずかしくなってしまいまして」

看護師「言え。先が気になって気分が悪い」

兄「……だからアイツの笑顔を、取り戻したい、みたいな?」

看護師「……そっか」


133: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)22:02:32 ID:JRL

兄「自分勝手な考えだとは思います」

兄「結果的にアイツを苦しめることになっちゃいましたし」

看護師「いいんじゃない?」

看護師「キミの行為じたいは褒められるもんじゃないけど」

看護師「キミの妹ちゃんに対する思いは、たぶん本物だと思うんだ」

兄「……ありがとうございます」

看護師「でも、キミの妹ちゃんには色々つらかったんだろうね」

看護師「キミの思いが重かったんだろうね」

兄「どういうことですか?」

看護師「……わたしさ、高校の頃、好きな男子がいたの」

兄「はい?」

看護師「まあ聞けって」


134: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)22:06:07 ID:JRL


看護師「わたしの惚れた人、超イケメンだったからわたしは近づけなかったの」

看護師「そしたら友達がわたしのために、やらかしちゃってくれてさ」

兄「友達はなにをしたんです?」

看護師「わたしの寝てるときの写真をそのイケメンに送りつけやがったの」

兄「あらら」

看護師「そりゃ、もうわたしは暴れたね。送った写真は一番ブサイクな寝顔だったし」

看護師「友達は絶対にいい、とか言い出したけどありえないってね」

兄「……」

看護師「たぶんキミが見舞いに来てなにかを言うたびに、妹ちゃんはすごいストレスを感じてんじゃない?」

兄「なんで?」

看護師「一番見られたくないところを見せなきゃならないのは、誰だってつらいだろ?」

兄「……」


135: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)22:08:48 ID:JRL

看護師「まっ、もっとうちの医者がしっかりしてりゃあまた、ちがったのかもね」

兄「……」

看護師「とりあえず、しばらくは妹ちゃんをひとりにしてあげたほうがいい」

兄「ぼくにできることはなにかないんでしょうか?」

看護師「見守ることじゃないの?」

兄「それしかできないんですかね?」

看護師「できないんじゃない?」


136: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)22:12:40 ID:JRL

兄「くやしいですね」

看護師「仕方ないよ。こういう病気は自分とのたたかいだからね」

兄「……」

看護師「下手に励ましたり慰めたりするのもよくないし」

兄「テレビで見たことあります」

兄「励まされたりすると、その反動でかえって病気が悪化するらしいですね」

看護師「不思議なことにね」

看護師「病気の最中はポジティブなものがネガティブなものに変わっちゃうらしいね」


137: 名無しさん@おーぷん 2015/09/15(火)22:15:06 ID:JRL

看護師「とりあえずさ、今日は帰ったら?  やれることなんてないし」

兄「そう、ですよね」

看護師「できることと言えば、あとは考えることだね」

兄「なにをですか?」

看護師「自分になにができるか」

兄「なにができるんですか、今の僕に……」

看護師「自分で考えなよ。それはわたしが考えることじゃない」

兄「……」





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妹「くちゃくちゃくちゃ」5




妹「くちゃくちゃくちゃ」
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1442149033/
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